IMF世界経済見通し(2020年10月版)のGDP予測をグラフで眺める


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • 最新(2020年10月)のIMF予測を基に、世界経済における日本の立ち位置を知りたい方
  • COVID19が、世界経済がどのような影響を与えると見込まれているかを知りたい方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • G7、G20、アジア主要国・地域の最新(2020年10月)の1人当たり名目GDP購買力平価GDPIMF予測を、1980年以降の実績数値と合わせてグラフで示しています
  • COVID19により、IMF予測にどのような変化があったかをグラフで示しています
  • COVID19により、全体としては先進国よりも新興国の方が大きな影響を受けていますが、日本の受ける影響は他の先進諸国よりも深刻であると見込まれています

2020年10月、IMF国際通貨基金)による最新の世界経済見通しが発表されました。以前のエントリー等でもご紹介しましたが、新型コロナウイルス(COVID19)の影響により予測値にも大きな影響が出ていますので、改めてグラフ化したものをご紹介したいと思います。

使用したデータソースはWorld Economic Outlook database: October 2020になります。IMFによる日本語版の解説資料もありますので、是非ご覧ください。

IMFのデータベースの説明については、以下のエントリーをご参照ください。

keiri.hatenablog.jp

G7の名目GDP購買力平価GDPをグラフで眺める

1人当たり名目GDP

まずはG7の1人当たり名目GDPのグラフです。最新の予測では、2020年に各国のGDPが大きく落ち込んでいることが分かります。ただし、米>>独>加>日英仏>伊という構造には大きな変化はありません。

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1人当たり購買力平価GDP

続いて、1人当たり購買力平価GDPのグラフです。アメリカ、次いでドイツが他を引き離している状況は同じですが、他の国はそこまで大きな差はありません。ただし、日本はイタリアと並んで最下位グループとなっています。

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COVID19がGDP予測値に与えた影響

COVID19の影響で、GDP予測値にどのような影響があったのか、IMFの2019年10月時点の予測と、2020年10月時点の予測とを比較することで、確認してみたいと思います。

G7のうち旧G5を構成する日米英仏独5ヵ国について、1人当たり名目GDPの予測がどのように変化したかをグラフで表しました。点線が2019年10月時点の予測、実線が2020年10月時点の予測を示しています。

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これを見ると、日米以外の欧州各国は、2021年以降は経済が急回復して、従来の予測値を上回る経済成長が見込まれていることが分かります。もちろん、これはCOVID19以外の経済状況の変化による影響が含まれていますし、また、直近での欧州における感染再拡大を考慮する前の数値ですので、この予測値をそのまま鵜呑みにすることはできませんが、それでも日米はCOVID19の影響を長く引きずるという予測になっていることは示唆的です。

なお、G7の2024年時点の1人当たり名目GDP予測値の変化率を示すと、以下の通りです。

国名 名目GDP予測値の変化率
Canada -7.8%
France +2.6%
Germany +4.1%
Italy +3.2%
Japan -6.6%
United Kingdom +2.8%
United States -3.0%

参考までに、1人当たり購買力平価GDPについても、同様のグラフ及び表を以下に示します。購買力平価については、購買力平価の基準が変わっているので単純な比較が難しいのですが、日本への影響が特に大きいという結論は変わりません。

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国名 購買力平価GDP予測値の変化率
Canada -4.2%
France +0.2%
Germany +1.5%
Italy +3.0%
Japan -7.7%
United Kingdom -2.3%
United States -3.0%

G20の名目GDP購買力平価GDPをグラフで眺める

1人当たり名目GDP

G20の1人当たり名目GDPのグラフを以下に示します。

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韓国の成長が著しく、すでにG7の一角であるイタリアを同水準に達しています。また、世界第2位の経済大国である中国が、1人当たりGDPの指標においても、主要新興国の中で(ロシアをも上回り)トップになると予測されていることや、インドは依然としてG20の中で最下位であり、中国に大きく水をあけられていること等が読み取れます。

1人当たり購買力平価GDP

続いて、G20の1人当たり購買力平価GDPのグラフです。

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これを見ると、1人当たり名目GDPとはまた違った様子が見えてきます。まず、韓国、サウジアラビアは、すでにイタリアや日本をも上回って、G7の中位国(英仏加)と同水準に達する見込みです。その他の主要新興国の中では、トルコ、ロシアが上位群を形成し、中国以下その他の新興国を引き離しています。

COVID19がGDP予測値に与えた影響

ここでも、COVID19の影響で、G20GDP予測値にどのような影響があったのか、IMFの2019年10月時点の予測と、2020年10月時点の予測とを比較することで、確認してみたいと思います。

G20の1人当たり名目GDPの変化率を並べたグラフは以下の通りです。G7各国を緑色で表示しています。

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これを見ると、先進国よりも新興国の方がより大きな影響を受けると予測されていることが一目瞭然です。G7の中では、日本の受ける影響が特に大きいですが、新興国の多くはさらに深刻な影響を受けると考えられています。ただし、感染封じ込めに成功したとされる中国や韓国は、影響が小さいと見込まれているようです。

参考までに、1人当たり購買力平価GDPについても、同様のグラフを以下に示しておきます。

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アジア主要国・地域の名目GDP購買力平価GDPをグラフで眺める

最後に、アジア主要国・地域として、日本、韓国、中国、台湾、香港、シンガポールの1人当たりGDPの推移をグラフで示しました。1人当たり名目GDPは、日本はすでにシンガポール、香港を大きく下回っており、1人当たり購買力平価GDPは、さらに韓国、台湾を下回る水準で推移しています。

もちろん、シンガポールや香港は都市国家であり、日本も東京都だけで比較すればこれらの国・地域よりも高くなるという話もありますが、しかし日本はもはやアジアの中において圧倒的に豊かな国ではない、という事実は認識しておく必要があると思います。

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