国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を読んで

はじめに 国税庁の対応は本当に妥当だったのか? Q&Aの内容 税法における実質主義 税制適格SOは使いやすくなるのか? おわりに はじめに ここ数日、信託型SO(ストック・オプション)をめぐる課税問題で、スタートアップ界隈が盛り上がっています。実務的な…

信託型SOの国税庁見解に関する個人的メモ

信託型ストック・オプション(以下、ストック・オプションをSOと略します)の税務上の取扱いについて、国税庁が従来の理解と異なる見解を示していることにつき、昨日(5/27)の日経新聞朝刊1面において大々的に取り上げられました。 www.nikkei.com 本見解…

経理マンが経験したスタートアップにおける資金調達

公認会計士や経理担当者はAccountingの専門家ではあるけれども、必ずしもFinance(資金調達)の専門家ではありません。しかし、Financeの専門家であるとみなされることが多いです。実際には、教科書的な一定の知識は持っていても、Financeの経験を積んでいる…

上場企業の経理マンがスタートアップに転職して感じたこと

GWということで、久しぶりのBlog投稿となります。 上場企業の経理担当者が未上場のスタートアップに転職すると、業務範囲が大幅に広がります。もちろん、経理として月次決算なども担当しますが、その割合は全業務の1割にも満たない程度でしょう*1。上場企業…

転職して半年間を振り返って

スタートアップに転職して約半年が経過しました。転職後はほとんどBlogを更新できていませんでしたが、2021年を終えるにあたり、簡単に半年間の振り返りを記載しておきたいと思います。 総括 来年に向けた反省ポイント 1.形式ではなく実質を考える 2.も…

転職のご報告

先日、上場企業の経理マンから、未上場スタートアップの経理マンに転職しました。転職活動や、転職後のバタバタもあり、なかなかブログを更新できていませんでしたが、また落ち着いた頃に投稿を再開したいと思います。 転職してからまだわずかな期間しか経っ…

のれんは償却すべきか?

この記事は主に以下の方に向けて書かれています。 のれんを巡る会計処理について興味のある方 なぜIFRSではのれんを償却しなくて良いのに、日本基準では償却しなければならないのか、納得できない方 この記事には以下の内容が書かれています。 のれんは償却…

『ミスタッチを恐れるな』

今回は趣味で読んだ本について、ご紹介したいと思います。 ウィリアム・ウェストニー著『ミスタッチを恐れるな』(ヤマハミュージックメディア)を再読しました。久々に読み直すと、ピアノを演奏する上で、非常に示唆に富む洞察が多かったので、特に気になっ…

軸を作るということ

明けましておめでとうございます。2021年の初投稿です。 さて、さっそくですが、私の今年の目標として、「自分の軸を作る」ということを意識したいと考えています。これはもちろん、経理マンとしての自分の強みを再認識する、ということもありますが、さらに…

経理マンが瀧本哲史氏の著作を再読した感想

『僕は君たちに武器を配りたい』(講談社)、『武器としての決断思考』(星海社新書)などの著作で有名な、エンジェル投資家の瀧本哲史氏。2019年8月に逝去されましたが、本屋にいまなお著作が平積みされるなど、強い影響力を誇っています。 これらの著作は2…

資本主義の本質と資本コストについて

この記事は主に以下の方に向けて書かれています。 マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に興味のある方 資本主義の本質や、日本の資本主義の問題点について興味のある方 ファイナンスにおいて、株主資本コスト>負債コストと…

ケインズ「知的影響力から自由なつもりの実務屋は、たいがいどこかの破綻した経済学者の奴隷」

経済学者ケインズの名言に、以下のようなものがあります*1。 知的影響力から自由なつもりの実務屋は、たいがいどこかの破綻した経済学者の奴隷です。(ジョン・メイナード・ケインズ「雇用、利子、お金の一般理論」) これは、「実務家には教養やアカデミッ…

IMF世界経済見通し(2020年10月版)のGDP予測をグラフで眺める

この記事は主に以下の方に向けて書かれています。 最新(2020年10月)のIMF予測を基に、世界経済における日本の立ち位置を知りたい方 COVID19が、世界経済がどのような影響を与えると見込まれているかを知りたい方 この記事には以下の内容が書かれています。…

『論理の方法―社会科学のためのモデル』

しばらく前に、小室直樹著『論理の方法―社会科学のためのモデル』(東洋経済新報社)(以下、『論理の方法』)を読みました。20年近く前の本であり*1、小室先生の著作を読むのは初めてでしたが、何といっても著者の豊富な知識量に圧倒されました。文体もやや…

賃貸と持ち家のどちらが得か、会計的に考える

賃貸と持ち家のどちらを選択すべきか、個人的に考える機会がありました。世の中には様々な意見があり、価値観やライフスタイルによっても答えが変わってくる問いだと思いますが、ここでは簿記3級程度の知識があることを前提に、会計的な観点で賃貸と持ち家の…

経理マンとしての幅を広げるには

この記事は主に以下の方に向けて書かれています。 多忙な日々を送っており、仕事は充実しているものの、このまま今の仕事のやり方を続けていていいのか、と考える経理マンや会計士の方 この記事には以下の内容が書かれています。 経理マンは、少なくとも自分…

経理マンによるG検定受験対策

この記事は主に以下の方に向けて書かれています。 日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催するG検定に興味のある方 AI(人工知能)に興味があるノンプログラマーの方 この記事には以下の内容が書かれています。 門外漢である経理マンによるAI関連知識の学…

経理系書籍の感想

最近は本屋に行くと、経理系の書籍の数が昔と比べて増えてきたように感じます。そこで、最近読んだ経理系書籍のうち、特におススメできるものをいくつかご紹介したいと思います。 『経理高速化のための7つのITツール活用戦略』 『経営を強くする戦略経理』 …

『戦略的思考とは何か』

先日、本屋で平積みされていた 岡崎久彦著 『戦略的思考とは何か』(中公新書)という本を購入してみました。「戦略」とは非常に魅力的な響きのある言葉であり、企業戦略、経営戦略などビジネスの世界でも頻繁に使用される一方、日本人が特に苦手としている…

『大本営参謀の情報戦記』

先日、データサイエンティストの方のブログ記事の中で、データ分析に携わる者の必読書として 堀栄三著『情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記』(文春文庫)という書籍が紹介されていたので、読んでみました。予想以上に面白く、かつ歴史に詳しくなくて…

『CFO 最先端を行く経営管理』

最近、中央経済社より刊行された『CFO 最先端を行く経営管理』という書籍を読みました。経理マンにとっても有益な内容が多数含まれていましたので、ご紹介したいと思います。 この本は昆政彦氏、大矢俊樹氏、石橋善一郎氏の3名の著者による共著ですが、うち2…

わかりやすい税効果会計

この記事は主に以下の方に向けて書かれています。 税効果会計の名前は知っているが、正直なところ、内容が良く分かっていない方(簿記2級~3級程度の方を想定) この記事には以下の内容が書かれています。 実務上知っておく必要がある、税効果会計のざっくり…

経理部において在宅勤務は可能か?

※令和3年度税制改正により、電子帳簿等保存制度の抜本的な見直し(規制の大幅緩和)が行われます。この記事の内容は、当税制改正前の情報に基づいていますので、ご注意ください。 この記事は主に以下の方に向けて書かれています。 他の会社の危機対応状況を…

『マネジャーのための人材育成スキル』

最近、経理部内の後輩の育成について考える機会があり、以前購入した 大久保幸夫著『マネジャーのための人材育成スキル』(日経文庫)という本を再読してみました。 この本を読んで、以下のような育成の重要性を改めて認識しました。 報連相*1の習慣を身につ…

経理マンがKaggleに登録してみた

この連休中に、以前から興味があったKaggleに今更ながら登録してみましたので、記録として記事を書きます。 Kaggleとは、データ解析コンペティションを開催している英語サイトであり、2017年にGoogle(の持株会社であるAlphabet社)に買収されています。コン…

チーム内の業務割当てをPython + PuLPで最適化

Pythonのオンライン学習サービスであるPyQの「数理的アプローチによる問題解決」という教材を少し学習してみました。 blog.pyq.jp グラフ理論を実装するnetworkxというライブラリや、PuLPという線形最適化のライブラリなどについて学ぶことができます。具体…

男性の育児・育休について

2019年の終わり頃、第一子となる娘が誕生しました。生後2か月を過ぎて思ったことや、男性の育児や育休についていま感じていることを、つらつらと記録しておきたいと思います。これから子どもが産まれる方(特に男性)の参考になれば幸いです。 子どもが産ま…

間接法によるキャッシュ・フロー計算書の本質

経理部メンバーに間接法キャッシュ・フロー(CF)計算書の仕組みを説明するにあたり、改めてCF計算書について考えてみました。間接法CF計算書の仕組みについて知りたい方の参考になれば幸いです。 なお、ここでキャッシュ(Cash)とは基本的に現金と預金の合…

付加価値を生む仕事とは

突然ですが、管理部門の仕事は付加価値を生んでいるのでしょうか。私は管理部門に属する経理マンですが、経理業務は実は付加価値を生んではいないのではないか、最近ふとそんなことを考えていました。 経理マンは付加価値を生んでいるのか 付加価値と社会的…

日本市場の株価はバブル期を超えた?

このブログは令和の時代になってから始めましたが、平成の終わりを迎えるにあたり、株価がバブル期を超えた、といった記事がありました。 www.nikkei.com もちろん、平成の終わりの時点において、日経平均株価はバブル期の最高値の6割弱に過ぎません。では何…