過去20年間の日本経済(GDP)の推移をグラフで眺める(購買力平価GDP編その2)


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • アジアにおける日本経済の立ち位置、日本とアジア主要国の経済力の現状をざっくり把握したい方
  • アジアの中で日本の経済的優位が失われていくことを危惧されている方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • 1人当たり購買力平価GDPで見ると、日本はシンガポール、香港、台湾を下回っており、韓国にも5年内に逆転される見込み
  • 1人当たり名目GDPで見ても、日本はシンガポール、香港にすでに逆転されている(台湾、韓国には当面の間追いつかれることはない)
  • 日本全体ではなく、東京都の一人当たり名目GDPで比較すると、東京都はシンガポールを上回っている
  • 東京都の名目GDPは韓国・ロシアには及ばずトルコと同程度、関東地方全体であればカナダ、イタリアを上回る

アジアにおける日本の1人当たり購買力平価GDP

前回のエントリーで、日本の1人当たり購買力平価GDPは、他の主要先進国(G7)と比べて著しく低い水準ではないものの、新興国の猛追を受けており、特に韓国には2023年に逆転される予測となっている、と書きました。

keiri.hatenablog.jp

前回は、世界の主要国としてG20の国々のGDPをグラフで示しましたが、今回はアジアに限定して、アジア主要国・地域として、日本の他に中国、香港、韓国、シンガポール、台湾を比較対象としてグラフを作成しました。1人当たり購買力平価GDPのグラフは以下の通りです。

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上のグラフを見ると、日本はすでにシンガポール、香港、台湾に追い抜かれていることが分かります。もっとも、1980年頃から、日本の1人当たり購買力平価GDPシンガポール、香港とは大差がなく、1990年頃からシンガポールが、2005年頃から香港が、日本の水準を上回ってきていることが分かります。そして2010年頃には台湾に逆転され、2023年には韓国にも逆転される見込みとなっています。

シンガポールについては、すでに日本の2倍を大きく超える水準となっており、これはG7でトップのアメリカをも大きく上回っている状況です。

アジアにおける日本の1人当たり名目GDP

以上は1人当たり購買力平価GDPでの比較でしたが、それでは1人当たり名目GDPではどうでしょうか。同じようにグラフにしてみます。

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上のグラフを見ると、名目GDPでも、2010年頃にシンガポールに追い越され、その数年後に香港にも追い越されていることが分かります。名目GDPでは、一人当たりGDPが韓国>台湾となっており(購買力平価GDPでは台湾>韓国)、韓国、台湾に対しては当面の間は日本が優位を保つ予測となっています。

いずれにしても、1990年頃には他のアジア主要国と比べて圧倒的に高かった日本のGDPも、今ではアジアの中で圧倒的に高いとまでは言えない水準となっています。

最後に、参考までに国全体の名目GDPをグラフにしてみました。

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やはり中国の圧勝です。それ以外の国・地域も、人口が少ないため、日本と比べるとまだまだ小さい水準であることが分かります。経済規模で言えば、少なくとも今後数十年間は、日本はアジア第2位の地位に留まることは確実なように思います。

東京都のGDP

シンガポールや香港が、一人当たり購買力平価GDPのみならず、一人当たり名目GDPでも日本を超えた、というのは、なかなかショッキングな事実です。一方、これらの都市国家と、日本という巨大な国家を比べるのは無理があるのではないか、比べるなら東京都と比較すべきではないのか、といった意見もあるかと思います。

この点については、内閣府都道府県別のGDP(県内総生産)を発表しており、東京都も東京都の経済計算の詳細を公表しています。これらを分析するのも興味深いのですが、東京都が都債発行のために作成している資料に、まさに知りたい情報をまとめた資料がありましたので、今回はこちらをそのまま以下に引用します。

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これを見ると、東京都の一人当たりGDPは、シンガポールはもちろん、アメリカをも上回っていることが分かります。もちろんアメリカの有力都市には劣るのでしょうが、なかなか高い水準であることが分かります。なお、日本の人口の1割弱が集中する東京都の平均が、日本全体の平均を大きく上回っているあたり、日本の地域別経済格差の存在を浮き彫りにしているとも言えます。

参考までに、GDPの絶対額についても引用しておきます。

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東京都の経済規模は韓国やオーストラリア、ロシアには負けており、トルコと同水準のようです。ちなみに、関東地方で見ると、韓国はおろか、カナダやイタリアをも上回る水準となります。これは内閣府資料に記載があり、以下に引用します。

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公的機関が公表している統計数値は興味深いものが多いので、もし興味がある方はいろいろ探してみると面白いと思います。