転職して半年間を振り返って

スタートアップに転職して約半年が経過しました。転職後はほとんどBlogを更新できていませんでしたが、2021年を終えるにあたり、簡単に半年間の振り返りを記載しておきたいと思います。

総括

上場会社の経理マンから未上場スタートアップの経理マンへの転職をしましたが、全体的な感想としては、思いのほかギャップが大きかったです。

具体的には、カルチャーの違いもありますが、やはり業務領域の広さが違います。スタートアップは(フェーズにもよるとは思いますが)一般に管理部門が手薄なため、経理マンとしての採用であっても、経理のみならず、経営企画、人事、労務、総務等の他領域についても対応が求められることがあります。上場会社であれば、経理部員が経理関連以外の業務を行うことはほとんど考えられないでしょう。この状況を楽しめるかどうか、また、自分のキャリアにとってプラスになると考えられるかどうかが、未上場スタートアップへの転職が成功するかどうかの一つのポイントになりそうです。

個人的には、管理部門全体を見渡せることに対して充実感が大きい一方、会計の専門知識を使わなくなり強みがさび付いてしまうのではないか*1、また専門性を発揮できていないことにより会社に十分貢献できていないのではないか*2、といった不安を感じることがありました。

来年に向けた反省ポイント

自分自身の反省を踏まえて、来年に向けて、思いつくままに3つのポイントを備忘として記載しておきたいと思います。いずれも頭では理解していても、実践するのがなかなか難しかった内容になります。

1.形式ではなく実質を考える

上場会社の経理マンをしていると、まずは資料が形式的に充足しているかどうか、整合性が取れているかを第一に考える癖がついてしまうように思います(これは監査人も同様です)。形式より実質、と頭では分かっていても、ミスの許されない開示書類の作成に追われていると、どうしても形式重視が体に染みついてしまうのでしょう。これは必ずしも悪いことではないのですが、どうしても官僚的な仕事になってしまい、スタートアップのスピード感や期待感とは必ずしも相容れない部分があるように思います。

2.もう一歩踏み込む

上場会社の経理マンの第一の目標は、過去の事象を会計処理に落とし込んで、適切な財務諸表を作成することです。このために、客観的であろうとして、つい一歩引いてしまう癖がついている気がします(これも監査人と同様です)。もちろん上場会社の経理マンであれば、役員や他部門から意見を求められる機会もあるとは思いますが、スタートアップであれば、まさに経理マンが財布の紐を握るわけですから、どこに限られた資金を投下すべきか、経営判断に踏み込んで意見することが求められます。より意思決定に近いポジションで仕事をする必要があるとも言えます。

3.職業的懐疑心を発揮する

これは経理マンというよりは、監査人の視点になりますが、「職業的懐疑心」*3の発揮が特に重要になります。たとえば、経営者が作った予算計画が、本当に実現可能性があるのか、現有リソース、タイムラインで実行できるのか。ビジネスの知見が乏しい経理マンであっても、職業的懐疑心を発揮して、より良い計画策定に貢献することが求められます。

来年に向けて

スタートアップに転職して、担当領域・責任範囲が広くなった以上、経理マンであっても、計数面での管理を通じて、会社の企業価値の向上に貢献していくという強い意志、もしくは覚悟のようなものが求められていると感じました*4。このあたりが来年の課題になると思っています。

転職してからは、職場環境に慣れることを優先して、まとまってインプットする時間を確保できていませんでしたが、来年は意識的に時間を確保して、興味深かった内容についてはこのBlogでも公開していければと考えています。

それでは最後になりましたが、皆さま良いお年をお迎えください。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

*1:上場会社の経理マン時代と同じように、会計、特に決算開示周りについては継続学習しておくことが必要だと思います。

*2:経理以外の業務についてはほぼ素人なので、専門性が発揮できないのは仕方がないことです。その上で、必要に応じてキャッチアップしながら、会社にどう貢献するかを考える必要があります。

*3:監査論においては「誤謬又は不正による虚偽表示の可能性を示す状態に常に注意し、監査証拠を鵜呑みにせず、批判的に評価する姿勢」を指しますが、監査証拠を社内資料に置き換えれば、経理マンであっても発揮すべき能力であると思います。

*4:特にCFOがいないスタートアップであれば、なおさら経理マンにこのような役割が期待されるのだと思います。