日本市場の株価はバブル期を超えた?

このブログは令和の時代になってから始めましたが、平成の終わりを迎えるにあたり、株価がバブル期を超えた、といった記事がありました。

www.nikkei.com

もちろん、平成の終わりの時点において、日経平均株価はバブル期の最高値の6割弱に過ぎません。では何がバブル期を超えたか、といえば、それは日本市場全体の時価総額です。

少し探してみたのですが、日本市場の時価総額推移のグラフがありませんでしたので、東証の公表しているデータを使用し、日本市場の時価総額東証時価総額とみなして、自ら作成してみました。

なお、比較として用いる日経平均株価は、長期間の時系列データがなかなか見つからず*1、海外のこちらのサイトから取得しました。

さて、さっそく1980年から平成の終わり(2019年4月末)までの、東証時価総額日経平均株価の推移をグラフにしたものが以下になります。

f:id:cpahermits:20191012164052j:plain

これを見ると、1998年頃まではほとんど両者は同じように動いていたものが、それ以降徐々に乖離し、今では大きく乖離している様子が分かります。日経平均株価はバブル最高値にまだまだ達していませんが、東証時価総額は2015年5月にバブル期(611兆円)を超え(620兆円)、2018年1月に最高値(710兆円)を付け、平成が終わる2019年4月においても、バブル最高値を超える水準(631兆円)となっています

ではなぜこんなに大きく乖離しているのでしょうか。理由としては、上場する会社数が増加していることが挙げられます。東証上場会社数の推移は以下の通りです。元データはこちら

f:id:cpahermits:20191012164148j:plain

株価のグラフが丸くなっていますが、これは参考程度ということで。。棒グラフに着目すると、2000年以降、東証上場会社数は増加傾向にあります。2013年に急増しているのは、東証大阪証券取引所と統合したことによります。これにより社数は大きく増加しましたが、大証のみに上場していた銘柄には大型株が少ないため、株式時価総額への影響は限定的となっているようです。

いずれにしても、日経平均株価は株式市場全体の時価総額とは一致しなくなっています。会社数が増えているのだから時価総額が増えるのは当然で、それ自体に意味はない、という主張をする人もいるかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。従来は、一部の金融株などがバブルで高騰し、日経平均株価を引き上げていましたが、現在では、日経225に含まれないような多くの中堅上場企業が奮闘している、言い換えれば日本の資本市場の厚みが大きく増したことを示しているのであり、良いことだと私は考えています。

とはいえ、令和の時代、それも比較的早いうちに、日経平均株価がバブル期の最高値を超え、史上最高値(4万円超え)を更新することを期待したいと思います。

*1:日経のHPを見ると、日次だと2016年以降、月次でも2000年以降しかデータがありません。

結局、過去20年間で日本は経済成長したのか、今後はどうなるのかをグラフで眺める


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • 世界経済における日本の立ち位置、諸外国と比べた時の日本の経済規模の推移、将来予測をざっくり把握したい方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • IMF予測に基づく1人当たり名目GDPの観点で主要国経済を眺めると、

    • 現在の日本の水準はイギリス、フランスを少し下回るが、2024年頃には両国を大きく上回り、カナダ、ドイツに迫る水準になる
    • アメリカは安定的に成長を続けており、独走状態に入っている
    • 2020年を超えるあたりで、韓国の水準がイタリアを上回り、韓国がG7下位グループと同等の水準になる
    • 2024年には中国もG20の下位グループから抜け出し、G7、オーストラリア、サウジアラビア、韓国に次ぐ水準となる
  • 1人当たり実質GDPの1992年以降の成長率の観点で主要国経済を眺めると、

    • 圧倒的に成長率が高いのは中国、次いでインド、その下に韓国、インドネシア、トルコの順であり、この5か国が指数関数的に成長し、それ以外の国には大きな差はない
    • 日本の成長率はサウジアラビア、イタリアに次いで、G20の中で下から3番目の成長率である

G20における1人当たり名目GDP推移

失われた20年と言われる期間、日本のGDPは諸外国と比べてどうなっていたのか。今後はどうなるのか。過去のエントリーでも少し考えてみましたが、今回は主要先進国(G7)の1人当たり名目GDPに関して、IMF国際通貨基金)が公表しているWorld Economic Outlookのデータを用いて、予測数値も含め、1980年~2024年の45年間の推移をグラフにしました。

f:id:cpahermits:20190916135129j:plain

失われた20年を1995年~2015年として強調してみると、以下の通りです。 f:id:cpahermits:20190929001322j:plain

これを見ると、日本の1人当たり名目GDPは1990年~1995年に大きく伸長していますが、これは為替の影響によるところが大きく、不自然な伸びであったといえるのではないでしょうか。米ドル表示の都合上、為替の影響を受けないアメリカが安定的に成長し、独走状態に入っています。2000年以降、日本はG7の中で埋没しつつも、IMF予測によると、2024年時点では英仏を大きく引き離して、独加とほぼ同水準にまで成長することが見込まれています。ドイツ以外のヨーロッパ諸国の成長率は著しく鈍化することが見込まれているということでしょうか。この予測によると、G7の中で日本が著しく劣るということはなさそうです。

次に、対象をG20に広げて、同じようにグラフを作成してみます。

f:id:cpahermits:20190916135149j:plain

G7に割り込む形でオーストラリアが大きく成長しています。一方、韓国も大きく成長してきており、G7の一角であるイタリアを数年内に追い越すことが予測されています。イタリアを追い越すと、韓国の経済水準が主要先進国(G7)に並んだと言えるかもしれませんが、昨今の韓国経済の状況を見ると、そう簡単にイタリアを追い越すことはできないかもしれません。ただ、いずれにしても、昨今の日韓対立に関して、韓国経済を過小評価している言説をいまだに見ますが、現実を直視することが必要であるように思います。こちらのエントリーでも書きましたが、1人当たり購買力平価GDPであれば、2023年に韓国が日本を追い越す予測となっており、日本も安穏としてはいられない状況であることが分かります。

さて、その他の国々を見ると、インド、インドネシアなどは、まだまだ低い水準にとどまっています。多くの人口を抱えるこれらの国が、中国並みに発展を加速するようになれば、世界経済へのインパクトは相当大きくなると思いますが、グラフを見る限り、それはまだ当面先になるようです。

その中国は、2024年には、ロシアやアルゼンチンも追い越し、G20の密集グループの中ではトップとなる見込みです。すなわち、G20の中では、1人当たり名目GDPで見たとしても、G7、オーストラリア、韓国、サウジアラビアに続く水準になるということです。中国の圧倒的な人口の多さを考えると、これはとてつもないインパクトがあることだと思います。

なお、参考として、2024年時点の、名目GDP予測ランキング(上位30か国)を載せておきます。

f:id:cpahermits:20190916135227j:plain

以上、名目GDPをベースしたグラフを紹介しましたが、購買力平価GDPに関しては、以下の2つのエントリーで多数のグラフを紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

keiri.hatenablog.jp

keiri.hatenablog.jp

G20における1人当たり実質GDP(自国通貨建)の伸び率の推移

続いて、1人当たり実質GDP(自国通貨建)を用いて、為替影響を除外して、過去25年で各国経済がどの程度成長したのかをグラフで示したいと思います。単位を揃えるため、1992年を100としたときのグラフを作成します*1。なお、ここでは実質GDPを用いていますが、これは名目GDPを用いるとインフレ率の高い一部の国の数値が異常値となるためです。よって、物価変動を考慮した実質GDPを利用します。

f:id:cpahermits:20190916135343j:plain

上のグラフを見ると、中国が圧倒的に成長し、続いてインド、韓国、インドネシア、トルコが大きく伸びています。それ以外の国々は団子になっていますが、次に縦軸の上限を200として、再度グラフを作成します。

f:id:cpahermits:20190916135355j:plain

これを見ると、G20の中で日本よりも成長率が低い国は、イタリア、サウジアラビアの2か国だけだということが分かります。確かに日本の成長率の低さが際立っています。もっとも、日本も厳しい状況ながら、イタリアは大丈夫なのか、かなり心配になりますが*2。。他のG7の国々を見ると、米英の成長率が高く、それに加独が続き、フランスは日本より少し上といったところです。

日本も少なくともG7平均並みの成長を維持できるよう、適切な設備投資による生産性向上に取り組んでいく必要がありそうです。ただし、最近よく見かける、日本経済が先進国から転落した、すでに後進国になった、と言ったような極端な言説はさすがにミスリードであり、以上で示した複数のグラフを見る限り、あまり真に受ける必要はなさそうです。

*1:1992年を基準としているのは、1991年以前のデータが欠落している国があること、また日本においてもバブル崩壊の真っ只中で大きな転機となった年であることが理由です。

*2:イタリアは南北格差が激しく、南イタリアの生産性は北イタリアに比べてはるかに低く、経済的にも停滞しています。一方、北イタリアの生産性の高さはドイツより高いとも言われ、イタリア全体で見ると、南イタリアが足を引っ張っている状況です。これは、北部と南部とでは歴史が大きく異なることに起因し、1861年に北イタリアのサヴォイア王家により南北統一がなされて以降も、ずっと続いている問題です。イタリア政府は南部の経済振興に多額の資金を投じていますが、これがマフィアやそれとつながる利権集団に流れ、全く成果が上がっていないことは良く知られています。このあたりの事情については、日本在住のイタリア人著者による「イタリア人と日本人、どっちがバカ?」という新書本がわかりやすくておススメです。

過去20年間の日本経済(GDP)の推移をグラフで眺める(購買力平価GDP編その2)


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • アジアにおける日本経済の立ち位置、日本とアジア主要国の経済力の現状をざっくり把握したい方
  • アジアの中で日本の経済的優位が失われていくことを危惧されている方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • 1人当たり購買力平価GDPで見ると、日本はシンガポール、香港、台湾を下回っており、韓国にも5年内に逆転される見込み
  • 1人当たり名目GDPで見ても、日本はシンガポール、香港にすでに逆転されている(台湾、韓国には当面の間追いつかれることはない)
  • 日本全体ではなく、東京都の一人当たり名目GDPで比較すると、東京都はシンガポールを上回っている
  • 東京都の名目GDPは韓国・ロシアには及ばずトルコと同程度、関東地方全体であればカナダ、イタリアを上回る

アジアにおける日本の1人当たり購買力平価GDP

前回のエントリーで、日本の1人当たり購買力平価GDPは、他の主要先進国(G7)と比べて著しく低い水準ではないものの、新興国の猛追を受けており、特に韓国には2023年に逆転される予測となっている、と書きました。

keiri.hatenablog.jp

前回は、世界の主要国としてG20の国々のGDPをグラフで示しましたが、今回はアジアに限定して、アジア主要国・地域として、日本の他に中国、香港、韓国、シンガポール、台湾を比較対象としてグラフを作成しました。1人当たり購買力平価GDPのグラフは以下の通りです。

f:id:cpahermits:20190915233040j:plain

上のグラフを見ると、日本はすでにシンガポール、香港、台湾に追い抜かれていることが分かります。もっとも、1980年頃から、日本の1人当たり購買力平価GDPシンガポール、香港とは大差がなく、1990年頃からシンガポールが、2005年頃から香港が、日本の水準を上回ってきていることが分かります。そして2010年頃には台湾に逆転され、2023年には韓国にも逆転される見込みとなっています。

シンガポールについては、すでに日本の2倍を大きく超える水準となっており、これはG7でトップのアメリカをも大きく上回っている状況です。

アジアにおける日本の1人当たり名目GDP

以上は1人当たり購買力平価GDPでの比較でしたが、それでは1人当たり名目GDPではどうでしょうか。同じようにグラフにしてみます。

f:id:cpahermits:20190915233123j:plain

上のグラフを見ると、名目GDPでも、2010年頃にシンガポールに追い越され、その数年後に香港にも追い越されていることが分かります。名目GDPでは、一人当たりGDPが韓国>台湾となっており(購買力平価GDPでは台湾>韓国)、韓国、台湾に対しては当面の間は日本が優位を保つ予測となっています。

いずれにしても、1990年頃には他のアジア主要国と比べて圧倒的に高かった日本のGDPも、今ではアジアの中で圧倒的に高いとまでは言えない水準となっています。

最後に、参考までに国全体の名目GDPをグラフにしてみました。

f:id:cpahermits:20190915233148j:plain

やはり中国の圧勝です。それ以外の国・地域も、人口が少ないため、日本と比べるとまだまだ小さい水準であることが分かります。経済規模で言えば、少なくとも今後数十年間は、日本はアジア第2位の地位に留まることは確実なように思います。

東京都のGDP

シンガポールや香港が、一人当たり購買力平価GDPのみならず、一人当たり名目GDPでも日本を超えた、というのは、なかなかショッキングな事実です。一方、これらの都市国家と、日本という巨大な国家を比べるのは無理があるのではないか、比べるなら東京都と比較すべきではないのか、といった意見もあるかと思います。

この点については、内閣府都道府県別のGDP(県内総生産)を発表しており、東京都も東京都の経済計算の詳細を公表しています。これらを分析するのも興味深いのですが、東京都が都債発行のために作成している資料に、まさに知りたい情報をまとめた資料がありましたので、今回はこちらをそのまま以下に引用します。

f:id:cpahermits:20190915233358p:plain

これを見ると、東京都の一人当たりGDPは、シンガポールはもちろん、アメリカをも上回っていることが分かります。もちろんアメリカの有力都市には劣るのでしょうが、なかなか高い水準であることが分かります。なお、日本の人口の1割弱が集中する東京都の平均が、日本全体の平均を大きく上回っているあたり、日本の地域別経済格差の存在を浮き彫りにしているとも言えます。

参考までに、GDPの絶対額についても引用しておきます。

f:id:cpahermits:20190915233419p:plain

東京都の経済規模は韓国やオーストラリア、ロシアには負けており、トルコと同水準のようです。ちなみに、関東地方で見ると、韓国はおろか、カナダやイタリアをも上回る水準となります。これは内閣府資料に記載があり、以下に引用します。

f:id:cpahermits:20190915233453p:plain

公的機関が公表している統計数値は興味深いものが多いので、もし興味がある方はいろいろ探してみると面白いと思います。

過去20年間の日本経済(GDP)の推移をグラフで眺める(購買力平価GDP編その1)


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • 世界経済における日本の立ち位置、日本と諸外国との経済力の現状をざっくり把握したい方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • 日本経済を1人当たり購買力平価GDPで見ると、1人当たり名目GDPとは全く異なる姿が見えてきます
  • G7における1人当たりGDPは、名目でも購買力平価でも米>>加独>英仏日>伊のイメージです

前回のエントリーでは、1人当たり名目GDPを使って、日本の世界経済における立ち位置をグラフで表現してみました。

keiri.hatenablog.jp

これを見ると、日本経済は1995年時点の1人当たり(名目)GDPでは、G7の中で他を大きく引き離してトップであったにもかかわらず、現在では下位グループに転落、国全体の(名目)GDPも成長が停滞しており、世界経済の成長から取り残されている様子がわかります。

しかし、一方で1人当たり購買力平価GDPの指標を使うと、また違った姿が見えてきます。このエントリーでは、米ドル換算した1人当たり購買力平価GDPを用いて、日本経済の世界における立ち位置をグラフで表していきたいと思います。

購買力平価GDPとは

購買力平価は英語でPPP(purchasing power parity)とも略しますが、1人当たり購買力平価GDPとは一体何でしょうか。ここでは、簡単にWikipediaの説明を引用します。

各国または地域で産み出された付加価値の総額の比較は、名目国内総生産GDP)と為替レート(通貨換算比率)を用いて行われることが多いが、これは国や地域ごとの生活のコストを反映しておらず、また国家間の資本移動の影響をうけやすい。市場取引における為替レートではなく、その地域の生活関連コストやインフレ率や収入の差などの要素を考慮した購買力平価(PPP)を用いることで、貿易や国家間投資のような、国際間資本移動の影響を受けにくいレートで比較することができる。

 

なお人口規模の算定や購買力平価(PPP)の推定には誤差が含まれる可能性があり、小さな違いに意味があると考えるべきではない。5%未満のGDPの違いは、推定の許容誤差内にあると一般に認められている。

要するに、生活コストやインフレ率などを考慮したレートを用いて1人当たりGDPを比較することで、各国の生活の実質的な豊かさを比べることができる、ということです。もちろん、現実には購買力平価(言い換えれば各国の物価水準)をたった一つの値で評価することは不可能なので、数値には相当程度の誤差が含まれる*1ことを認識する必要がありますが、それでも大まかな傾向をグラフで見るのであれば十分に有用だと思われます。

ただし、これは1人当たりGDPとして用いる場合に有用、ということであり、これを国全体のGDPの話に拡張して、購買力平価GDPを用いて比較をすると、あまり意味のない議論になると思われます。たとえば購買力平価GDPで見ると、中国がすでにアメリカを上回っていますが、それに何の意味があるでしょうか。国と国の経済規模を比較するのであれば、やはり名目GDPで比較をしないとあまり意味がないのではないか、というのが個人的な見解です。

IMFのデータベースの見方

前回のエントリーでは、日本の総務省統計局のデータを利用しましたが、このデータベースでは2012年以降の購買力平価GDPのデータしか掲載されていません。

そこで、今回はIMF国際通貨基金)が公表しているWorld Economic Outlook(WEO:世界経済見通し)というデータベースを使って、グラフを作ることにします。なお、WEOは、春と秋(通常4月と9月/10月)に発行され、年2回(1月と7月)アップデートされているとのことです。

www.imf.org

英語なので少し分かりにくいのですが、現時点の最新である2019年4月時点でのデータベースは、こちらのページから誰でも無料でダウンロード可能です。エクセルファイル形式ですので、すぐに分析を開始することができます。

ダウンロードして開いてみると、そのデータ量の大きさに驚くと思います。何しろ、全世界194の国・地域における、計45個のマクロ経済指標について、1980年~2024年の実績値・推計値が一覧で格納されています。大雑把に194×45×45年分=約40万近い数値が格納されています(もちろん欠損値も多いのですが)。ビッグデータの時代においては大したデータ量ではないかもしれませんが、質が高いので、使い方によっては宝の山になるかもしれません。

45の経済指標のうち、よく使用すると思われるものを、以下に一覧にしてみましたので、実際にダウンロードしてデータを活用しようと思っている方は参考にしてみてください。データベース上は、C列の「WEO Subject Code」というフィールドが経済指標を表しています。基本的にはC列の「WEO Subject Code」で見たい経済指標を選択し、D列の「Country」で調べたい国をいくつか選ぶことで、簡単にグラフを作ることができます*2

WEO Subject Code Subject Descriptor Units 日本語
NGDP_R Gross domestic product, constant prices National currency 実質GDP(自国通貨建)
NGDP_RPCH Gross domestic product, constant prices Percent change 実質GDPの成長率
NGDP Gross domestic product, current prices National currency 名目GDP(自国通貨建)
NGDPD Gross domestic product, current prices U.S. dollars 名目GDP(USドル建)
NGDPRPC Gross domestic product per capita, constant prices National currency 1人当たり実質GDP(自国通貨建)
NGDPPC Gross domestic product per capita, current prices National currency 1人当たり名目GDP(自国通貨建)
NGDPDPC Gross domestic product per capita, current prices U.S. dollars 1人当たり名目GDP(USドル建)
PPPPC Gross domestic product per capita, current prices Purchasing power parity; international dollars 1人当たり購買力平価GDP(USドル建)
GGXWDG General government gross debt National currency 政府総債務残高
GGXWDG_NGDP General government gross debt Percent of GDP 政府総債務残高の対GDP
BCA Current account balance U.S. dollars 経常収支
BCA_NGDPD Current account balance Percent of GDP 経常収支の対GDP

G7・G20における日本の1人当たり購買力平価GDP

さて、さっそくG7の各国の1980年以降の1人当たり購買力平価GDPをグラフにしてみました(以下、2024年までの推計値も合わせて表示します)*3

f:id:cpahermits:20190904232958j:plain

どうでしょうか。日本だけが取り残されていたように見えた名目GDPのグラフと比べて、日本は他の先進国と同じように成長しているように見えないでしょうか。逆に言えば、バブル期において、特に日本が突出して豊かであったということはなく、昔からアメリカが一番豊かであり、日本は他のG7の国と同じようなスピードで成長してきただけなのだ、とも考えられます。なお、現時点ではG7間でも少しずつ差が開いてきており、購買力平価GDPにおいても1人当たりGDP米>>加独>英仏日>伊となるのは、名目GDPと同様です。参考までに、前回のエントリーで掲載した1人当たり名目GDPのグラフを再掲します。

f:id:cpahermits:20190825031203j:plain

近年、日本はすでに後進国に転落した、などと煽る記事も多いのですが、このグラフを見る限りそのような言説をあまり真に受ける必要はなさそうです。決して日本の生活水準が他の先進国と比べて大きく下がっているということはありません*4

少し安心したところで、次に範囲をG20に拡大して、グラフを作成してみます。そうすると、また少し違った姿が見えます。

f:id:cpahermits:20190904233027j:plain

G7+オーストラリアの8か国が上位にいる構造は、基本的には名目GDPと同じですが、サウジアラビアがかなり謎の動きを見せています。これは例外としても、それ以外の国々も、名目GDPで見るよりも、1人当たりGDPを大きく伸ばしていることが分かります。

特に注目すべきは韓国です。韓国はすでにイタリアを1人当たり購買力平価GDPで上回っており、なんとIMF推計値によると、2023年には日本も韓国に抜かれる予測となっているのです。実は1人当たり購買力平価GDPで見ると、日本はすでに他のアジアの国々に抜かれています。少し長くなったので、今日のエントリーはここまでとして、次のエントリーで、アジアにおける日本の立ち位置をグラフで比較してみたいと思います。

*1:もちろん名目GDPの測定自体にも誤差はあるわけですが、それ以上に購買力平価GDPには誤差が大きい、という意味です。

*2:データベースの一番右の列に「Estimates Start After」というフィールドがあります。この数字によって、どこまでが実績値で、どこからが推計値かを知ることができます。たとえば「2018」と記載されていれば、2019年以降の値は推計値となります。

*3:WEO Subject CodeはPPPPCを選択しています。

*4:蛇足ですが、圧倒的に裕福なアメリカでトランプ大統領が誕生し、その次に位置するドイツでも極右勢力が台頭。そしてイギリスはBrexitで大混乱しており、フランスでもデモが活発化。このような状況下で客観的に見て、主要先進国のなかで日本の置かれている状況は決して悪いとは言えないように思います。もちろん日本にも課題が山積していることは確かで、思い切った対応が求められていることは確かなのですが、それでも隣の芝生が青いわけではない、ということだと思います。

過去20年間の日本経済(GDP)の推移をグラフで眺める(名目GDP編)


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • 世界経済における日本の立ち位置、日本と諸外国の経済力の現状をざっくり把握したい方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • G7における1人当たり名目GDPを見ると、1995年時点では日本が圧倒的なトップでしたが、現在では米>>加独>英仏日>伊のイメージです
  • 国全体の名目GDPでは、米中が大きく躍進する中、日本は20年間ほとんど成長せず2位から3位に転落、4位のドイツもすぐ下に迫っています

先日、日本経済がなぜ成長してこなかったか、という内容のエントリーを書きました。

keiri.hatenablog.jp

このエントリーでは、過去の日本のGDP国内総生産)の推移を諸外国と比べることで、今現在の世界経済における日本の立ち位置をグラフで示してみたいと思います。GDPデータは総務省統計局のデータ(1995年~2016年)を利用しています。エクセル形式でデータがダウンロードでき、簡単にグラフを作ることができますので、興味のある方は是非試してみてください。

https://www.stat.go.jp/data/sekai/0116.htmlwww.stat.go.jp

以下、諸外国との比較になりますので、米ドル換算の名目GDPを使用します。GDPそのものについては、下記のエントリーでも簡単に解説していますので、合わせてご覧ください。

keiri.hatenablog.jp

1人当たりGDPの推移

G20EUを除く19か国)と世界平均の1人当たりGDP推移をグラフにしてみましたので、ご覧ください。一人当たりGDPは、大まかに言うと、各国の1人当たりの国民の豊かさを表していると考えられます。

f:id:cpahermits:20190825031203j:plain

グラフを見るといろいろなことが読み取れます。

  • 1995年時点では、日本はG7の中でも圧倒的に高い1人当たり国内総生産を誇っていたが、2000年以降欧米諸国に追い抜かれ、今ではG7の中でも下位グループに属している(イタリアのおかげで何とか最下位にはなっていない)。G7内の序列は、米>>加独>英仏日>伊のイメージ

  • 1995年時点では、G7+オーストラリアの8か国と、それ以外のG20に属する11か国との間に、1人当たりGDPの水準に大きな差があった。全体的に差が縮まっている中で、韓国とサウジアラビアが大きく躍進しており、特に韓国はG7最下位のイタリアに肉薄している状況。

  • 1人当たりGDPで見ると、中国は大きく成長しているものの、まだ世界平均にも達していない状況であり、G7グループとは大きな差がある。

日本との比較をするために、日本を100%として、G20における上位10か国と世界平均について1人当たり名目GDPをプロットしたのが下図になります。

f:id:cpahermits:20190825031318j:plain

これを見ると、残念ながら日本がどんどん諸外国に追い抜かれていった状況がよくわかります。。

ちなみに、韓国の1人当たり名目GDPは、1995年時点では日本の30%ほどだったのが、今では80%にも達しています。現在日韓関係が非常に悪化していますが、昔の感覚で韓国の経済力を甘く見ていると痛い目にあうかもしれません。

国全体のGDPの推移

次にG20EUを除く19か国)について、一人当たりではなく、国全体の名目GDPをグラフにしたのが下図になります。

f:id:cpahermits:20190825031549j:plain

これを見ると、日本の低迷ぶりがより一層はっきりするとともに、ここ20年間の世界経済においてはアメリカの一人勝ち状態であり、中国がそれを激しく追い上げている状況が一目瞭然です。日本は米ドル換算の名目GDPでは過去20年間でまったく成長しておらず、すでにドイツに肉薄されていることがわかります。日本経済が順調に成長していれば、今の2倍くらいの経済規模になっていてもおかしくなかったのですが。。*1

1995年時点と、2016年時点の上位20か国の名目GDPを並べたのが下図になります。

f:id:cpahermits:20190825031714j:plain

f:id:cpahermits:20190825031727j:plain

ふたつのグラフの形はよく似ていますが、大きな違いは2位が日本から中国に入れ替わっていることです。日本は第3位以下のその他集団の中に埋没しつつあります。

ちなみに、ここでは上位20か国を図示していますが、G20に入っていない国がいくつかあります。2016年時点で見ると、スペイン、オランダ、スイスは20位以内ですが、G20には加盟していません。やはり、欧州における大国は独英仏伊で、この4か国で十分ということなのでしょう。もしG10という枠組みであれば、スペインとオーストラリアも入っていたのかもしれません。そして、オランダ、スイスはヨーロッパでは小国のイメージですが、一人当たりの生産性が高いため、経済規模で上位20位以内をキープしています。

一方、韓国も1995年時点から現在に至るまで、世界で第11位の経済規模を維持しています。そしてロシアは世界で第13位で、これも20年間変わっていません。ロシアは世界で大きな影響力を持っていますが、経済力で見れば、アメリカの足元にも及ばず、韓国にすら負けている状況です。国力を軍事力に極振りした結果、世界での影響力を維持していると見るべきなのでしょう。*2

*1:もっとも米ドル換算で比較しているため、もし日本が超円高で1ドル=50円くらいになれば、一気に経済規模は2倍に見えることになります。

*2:これは北朝鮮についても全く同じことが言えると思います。

統計的仮説検定の考え方と誤解


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • 統計学に苦手意識のある方
  • 「統計的に有意な結果が得られた」という記述を見て、その内容を正しいと思ってしまう方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • 統計的仮説検定は、確率的な背理法です
  • 統計的に有意な水準で差異があることと、差異自体に重要性があることとはまったく別の話です
  • 「統計的に有意な水準で~」という記述自体には、実はあまり意味がなく、逆にミスリーディングとなる可能性があります

先日、エンジニアの友人と会話をしていたところ、統計学は普段使わないから実はあまり分かってないんだよね、という話になりました。そこで私の理解を少し話したのですが、その内容を簡単にまとめておきたいと思います。なお、私自身は経理マンでして、統計の専門家ではありませんので、もし誤りがありましたらご指摘いただけると幸いです。

統計的仮説検定とは

検定」や「有意水準」などの言葉を聞くと身構えてしまう方もいると思いますが、そんなに難しい話ではありませんので、例を一つ挙げたいと思います。

1枚のコインがあるとして、これを6回放り投げたところ、6回連続で表が出たとします。このとき、このコインは何か細工がしてあると言えるでしょうか?

通常のコインであれば、裏表が出る確率は半分ずつとなるはずです。このとき、6回連続で表もしくは裏が出る確率を計算すると、表が6回出る確率は1/2を6回掛けて1/64、表と裏の両方を考えると2/64=約3%となります。この3%をどう評価するか、という話になります。3%しか起こらないのであれば、コインに細工がされているに違いないとも言えますし、逆に3%も起こり得るのであれば、やはり普通のコインなのではないか、とも言えます。

この3%の値を統計学ではp値(p-valueと呼んでいます。そして、これを評価するために出てくるのが「有意水準」という考え方です。たとえば有意水準を5%とすれば、p値が5%を下回っているので、統計的に有意な水準でコインには細工がされている、と言えることになります。一方、有意水準を1%とすれば、p値は1%よりも大きいので、統計的に有意な水準で結論は出ない、ということになります*1

これがまさに統計的仮説検定の考え方になります。ここでは、「コインには細工がなされておらず、裏表が出る確率は半分ずつ」という仮説を置いています。これを「帰無仮説」と呼びます。このとき、帰無仮説の反対、すなわち「コインには細工がなされていて、裏表が出る確率は半分ずつではない」という仮説を「対立仮説」と呼びます。

帰無仮説」を正しいと仮定して、実際に起きた事象が起きる確率であるp値を計算し、これが有意水準を下回っていれば、「帰無仮説」を棄却して「対立仮説」を採択する、という流れになります。これはいわゆる背理法的な考え方であり、統計的仮説検定は、確率的な背理法であると言えます。

なお、よくある勘違いとしては、もしp値が有意水準を上回ったとしても、「帰無仮説」が採択されるわけではないので、注意が必要です。コインの例でいうと、有意水準を1%に設定すると、p値は3%なので「帰無仮説」を棄却することはできませんが、このときは「統計学的には何も言えない」というのが正しい結論になります*2

区間推定と検定

実は統計的仮説検定には問題があるとして批判がされることがあり、検定ではなくて区間推定を使うべきという意見があります。検定と区間推定は本質的には同じものですが、区間推定とは何かについて、ごくごく簡単に記載します。

区間推定においては、信頼区間という概念が登場します。詳細は割愛しますが、たとえばAというダイエット薬があるとして、これを何人かに投与して効果を測定したところ、効果の平均値は25gだった場合、区間推定を行うと、統計的に95%信頼区間では20~30gの減量効果があった、といった形で結論を導くことができます。このとき、薬の効果は正しくは何gなのかを考えるにあたり、大体20~30gの間に正しい値が含まれているだろう、と考えることができます*3

このとき、仮に統計的仮説検定を行い、帰無仮説を「Aの効果はない」とした場合、有意水準を5%として、帰無仮説を棄却することができます。なぜなら95%信頼区間の中に「ゼロ」が含まれていないからです。たとえば、95%信頼区間が-10~60gという範囲であった場合、この区間には「ゼロ」が含まれるので、仮説検定を行うと、有意水準を5%とすると帰無仮説を棄却することができず、「Aの効果があるとは言えない」という結論になります。

統計的仮説検定の問題点とよくある誤解

統計的仮説検定が使われる場面として、二つのものを比べて有意に差があるかどうか、というケースがよくあります。たとえばAとBの二つのダイエット薬があり、Aの効果の95%信頼区間が20~30g、Bの効果の95%信頼区間が40~60gとなった場合、AとBの95%信頼区間が重なっていないため、有意水準を5%として、AとBとの間には統計的に有意な水準で差異があるとみなされます。

しかしながら、ここに一つ落とし穴があります。信頼区間の幅は標準誤差に影響を受けますが、この標準誤差はサンプルサイズ*4を大きくすると小さくなる性質があります*5。そのため、たくさんのデータを集めれば、信頼区間の範囲を狭めることができます

そうすると、大量のデータを集めた結果、たとえばAの効果の95%信頼区間が20~20.5g、Bの効果が95%信頼区間が21~21.5gだったらどうでしょう?この場合であっても、有意水準を5%として、統計的に有意な水準で差異があるとみなされます。しかし、本当にAとBに実質的に差異があると言えるでしょうか?これはケースバイケースですが、このくらいの差異であれば、差異の重要性が小さく、AとBとの間に実質的に差異がないと言えるケースもあるのではないでしょうか?このとき、大切なポイントとしては、その差異が実際にどのくらい大きいのかを考える必要があるということです*6

そのためには、検定で有意かそうでないかを機械的に判定するのではなく、区間推定を行って、その信頼区間の範囲を比べて重要かどうか判断することが必須になります。なぜなら、データ数を増やしてサンプルサイズを大きくすれば、検定をした際に統計的に有意な結論を導くことができてしまうからです。二つのものを比べる場合、一般的には、厳密に両者が完全に等しいということはあり得ないため、データ数を増やしていけば、どこかで統計的に有意な差が検出されることになります。

極端な話、検定を行った結果「統計的に有意な水準で差異が認められた」*7という文章自体にはほとんど意味がないのです。それは、有意水準が書かれていないという問題もありますが、それに加えて、どのくらいの差異があったか、という最も重要な情報が抜け落ちているからです。統計的に有意な水準で差異があること(statistically significant)と、差異自体に重要性があること(practically significant)とはまったく別の話なのです。このことが多くのケースで認識されておらず、ときに深刻な誤解やミスリーディングを招いているように思います*8

*1:有意水準の水準として5%や1%という値自体にあまり意味はありませんが、慣例的に5%や1%が利用されることが多いです。

*2:このように、有意水準をどの水準に置くかで結論が変わってしまいます。今回のようにp値が3%の場合に、結論ありきで有意水準として5%を選択するというのは、本来であれば厳禁であり、試行を行う前に有意水準や試行回数を決めておく必要があります。もっとも、実際には結論ありきになっているケースも多いようで、このあたりが統計的仮説検定への批判につながっているようです。

*3:よくある勘違いとして、正しい値が20~30gの中にある確率が95%である、という誤解があります。正しい値は神のみぞ知る値として確定していますので、20~30gの間に入っているか、入っていないかの2択しかありません。正しくは、95%信頼区間を求める測定作業をランダムに100回実施したときに、95回はその区間の中に母平均が含まれる、という解釈になります。ただ、いずれにしても、大体20~30gの間に正しい値が含まれているだろう、と考えて問題ありません。

*4:蛇足ですが、サンプルサイズとサンプル数は異なる概念であり、よく混同されるので注意が必要です。サンプルサイズは測定したデータの数を表しています。サンプル数は、データの塊であるサンプルがいくつあるかを表しています。

*5:標本平均の標準誤差は、標準偏差をサンプルサイズの平方根で除した値となります。

*6:もちろん小さな差異であっても、それが実質的に重要な意味を持つというケースもあり得ます。

*7:新聞の記事など、統計にあまり詳しくない方が書いたと思われる文章において、よくこのような言い回しを見ることがあります。

*8:これは統計的に有意であることを、英語でsignificantということも関係しているように思います。ここでのsignificantには統計的に有意ということ以上の意味はなく、重要という意味ではないのです。

結局、過去20年間で日本は経済成長したのか

3つのGDP

平成の時代は、失われた20年とか30年とか呼ばれることがありますが、これは平成の時代に日本がほとんど経済成長をせず、世界経済におけるプレゼンスを大きく低下させてきたためである思われます。経済成長をしないということは、つまりGDPが伸びなかったということですが、このGDPにも3つの種類があります。

バブル崩壊の影響が本格化した1992年(平成4年)を起点として、それから20年後のアベノミクスが始まった2012年(平成24年)、そして直近の2018年(平成30年)の3時点を比較する形で、GDP数値を確認したいと思います。なお、ソースは以下のサイトとなります。

ecodb.net

(円建) 1992年 2012年 2018年 1992~2012年の伸び率 2012~2018年の伸び率
名目GDP 495.0兆円 494.9兆円 549.0兆円 ▲0.0% +10.9%
実質GDP 423.4兆円 498.8兆円 534.4兆円 +17.8% +7.1%
(ドル建) 1992年 2012年 2018年 1992~2012年の伸び率 2012~2018年の伸び率
名目GDP 3.90兆ドル 6.20兆ドル 4.97兆ドル +58.7% ▲19.9%
購買力平価GDP 2.70兆ドル 4.73兆ドル 5.59兆ドル +75.0% +18.3%

年率換算すると、伸び率は以下の通りです。

(円建) 1992~2012年 2012~2018年 1992~2018年
名目GDP ▲0.0% +1.7% +0.4%
実質GDP +0.8% +1.2% +0.9%
(ドル建) 1992~2012年 2012~2018年 1992~2018年
名目GDP +2.3% ▲3.6% +0.9%
購買力平価GDP +2.8% +2.8% +2.8%

なお、下記のエントリーでグラフでも示していますので、是非こちらもご覧ください。

keiri.hatenablog.jp

GDPを時系列で比較して見えてくること

上表を見ると、1992年~2012年の20年間で、残念なことに日本の名目GDP(円建)はまったく増加していなかった、ということがわかります。これが「失われた20年」と呼ばれる理由になっていると思われます。そしてアベノミクスが始まって以降は、名目GDPの年率の成長率がゼロから+1.7%に増加しています。まだ先進国平均である2~3%には及びませんが、ようやく最悪の状況を脱しつつあると評価することができます。

一方で、失われた20年など存在しない、日本経済は平成の時代も成長し続けてきた、と主張する人もいます。それは実質GDP購買力平価GDPを見て評価しているからでしょう。特に購買力平価GDP(ドル建)は、アベノミクスにかかわらず、1992年以降は一貫して+2.8%の高成長を続けています。これでも先進国平均には及ばないのですが、それなりに健闘していたといえるでしょう。たしかに生活実感として、20年以上前と比べると、パソコンなど非常に高価だったものが安価で入手できるようになる、スマートフォンを持つのが一般的になるなど、生活は確実に便利になってきており、そういう意味では平成の時代がまったく成長していないという指摘は当たらないとも言えます。

ちなみに名目GDPをドル建てでみると、アベノミクス以前はプラス成長、それ以降はマイナス成長となっていますが、これは為替レートが円高から円安に大きく振れたことが要因です。一国の経済の大きさをそのまま示す名目GDPの成長率を見るにあたっては、自国建ての通貨で見るのが正当であり、この数値をもってアベノミクス批判をするのは筋が悪いように思います。様々な意見があると思いますが、アベノミクスで名目GDPが増加して、約500兆円の水準から約550兆円の水準に上昇したことは評価すべきだと思います。

蛇足ですが、もうすぐ参議院選挙が行われます。一般感覚として野党の戦況はよろしくないですが、安倍政権をこき下ろして完全否定するだけでは、あまり支持は拡大しないように思います*1。安倍政権の一定の成果を認めたうえで、それでも「我々が政権を取れば、さらに経済成長率を先進国平均並みに引き上げて、国民生活を豊かにすることができる」という主張を組み立てた方が、支持を得られるのではないかと感じます。

日本経済復活のために

購買力平価GDPで見れば、日本経済は成長しているとも言えるのですが、しかし名目GDPがほとんど伸びてこなかった以上、世界経済における日本のプレゼンスが大きく低下してしまったことは事実です。このままでは、日本は外国と比べて生活は比較的しやすいけど、物価が安くて貧乏な国になってしまうとも言えます。

日本経済が低迷した原因として、下記のエントリーでは、日本企業が日本国内に投資してこなかったことを要因として挙げました。

keiri.hatenablog.jp

これはヒト・モノ・カネで言うと、モノ・カネの話ですが、ヒトの観点からすると、日本では人材の流動性が低いということがよく問題点として挙げられます。日本の大企業では、40代、50代になるにつれて給料が上がるため、会社を辞めなくなる、といった話です。昔であれば、経験を積んだ50代の人たちの生産性が高かったのでしょうが、変化が激しく技術がすぐに陳腐化する今の時代において、過去の経験があまり活かせなくなるにつれて、給料は高いのに生産性が低い人たちが量産され、そういう人たちが会社にしがみついているため、生産性が上がらないのだ、というわけです。

たしかにそれはその通りで、人材の流動化を促進することは大きな課題の一つですが、一方で、大企業の生産性はそもそも比較的高く、日本の大部分を占める中小企業の生産性が低いことが、日本の低成長につながっているとの指摘もあります。これは人材を流動化するだけでは解決しない問題であり、いかに中小企業の生産性を上げるのかが、もう一つの大きな課題であるように思われます。方法としては、政府の補助金を廃止する、最低賃金を引き上げて生産性の低い企業を淘汰する、といった過激な方法もありますが*2、いずれにしても日本経済復活のためには避けては通れない課題だと思います。

*1:たしかに、最近で言えば、年金問題を巡っての麻生大臣の対応は最低でしたし、批判すべき点は多いのですが…。ただ、年金問題について言えば、そもそも一定の仮定の置いた上での2,000万円という数値自体にそんなに意味はなく、議論のための良いキッカケにもなるはずのところ、案の定まったく見当違いな方向に話が進み、結局、野党にとってもプラスにならなかったように思います。

*2:最低賃金引き上げはどの党も主張していますが、もっとも強硬に主張しているのが共産党(時給1,500円への引き上げを主張)なのが面白いところです。