のれんは償却すべきか?


この記事は主に以下の方に向けて書かれています。

  • のれんを巡る会計処理について興味のある方

  • なぜIFRSではのれんを償却しなくて良いのに、日本基準では償却しなければならないのか、納得できない方

この記事には以下の内容が書かれています。

  • のれんは償却すべきか、という有名な論点について、IFRS、日本基準それぞれの考え方を説明しています

  • 取得したのれんが自己創設のれんに置き換わることはIFRSも認めており、IFRSは「超過収益力が減価していない」からのれんを償却しないわけではありません

  • 「のれんの効果の及ぶ期間と減価パターンが予測不可能であり、償却計算が恣意的にならざるを得ない」という点をどれだけ重視するかが、IFRSと日本基準の見解の相違のポイントであり、IFRSは恣意的な計算であるため有用性がない、日本基準は投資回収計算の観点から恣意的な計算であっても十分に合理性がある、と考えます

  • 高く買ったのれん部分を投資回収計算から外していい、という理屈はなく、個人的な見解として、のれんは償却すべきであると結論付けています


のれんを償却すべきかどうか。会計上の非常に大きな論点の一つであり、日本基準とIFRS(およびUS-GAAP)との最も主要なGAAP差異でもあります。

ご存知のとおり、日本基準ではのれんを償却し、IFRS(およびUS-GAAP)では償却しません。この古くて新しい論点について、少し考えてみたいと思います。

のれん償却を巡る最近の動向

国際会計基準審議会(IASB)が、2020年3月にディスカッション・ペーパー(DP)「企業結合―開示,のれんおよび減損」を公表しました(2020年12月末にコメント募集終了)。

IASBは、「減損のみモデルを維持し,償却は再導入しない」との予備的見解を示していますが、償却の再導入を支持するボードメンバーも一定数いたため、広く意見を求めることになった経緯があります。このIFRSにおける「のれん償却の再検討」については、日経新聞などにも関連記事が掲載されましたので、記憶にある方もいらっしゃると思います。

www.nikkei.com

経営財務の2021年1月18日付の記事「IASB 減損と償却の両論を併記した意見も のれんDPへのコメント出揃う」によると、昨年末までに寄せられたコメントは計182件であり、「減損か、償却か」という点に関して,のれんの償却再導入を求めるコメントは日本のみならず、ドイツやスウェーデン、香港などからも寄せられたそうです。もちろん減損のみモデルを支持する意見も多く、今後どうなるかは見通せない状況のようです。

のれん償却に対する一般的な見解

ここでは、のれん償却についての一般的な見解について、ご紹介します。ASBJなど日本の会計団体は、基本的に「のれんは償却すべき」とのスタンスですが、もちろん経済界からは反対の声も多く、のれんを償却したくないからIFRSを採用している会社も(公言しているかどうかはともかく)数多く存在しています。

まずは実務家の立場で、どのような意見があるのか、対照的な二つの事例を取り上げたいと思います。

のれん償却に反対の意見

偶然見掛けた、とあるIFRS導入企業のコーポレートブログが非常に分かりやすかったので、こちらを参考にしたいと思います。

corporateblog.zigexn.co.jp

主な主張をまとめてみると、以下の通りです。

  • M&Aの実務担当者として、実態に近いのはIFRSではないかと考えている。

    • (理由1)M&A後の業績が大きく伸張しており、取得額に対して十分な利益を計上している企業の「超過収益力」が減価しているというのは考えづらい

    • (理由2)著しい低下以外の公正価値変動を考慮せずに定期償却を義務付け、償却年数や償却方法はまちまちな日本基準よりも、毎期必ず公正価値*1を算出して「超過収益力」に変化がないか判定するIFRSの方が、フェアで恣意性も低い

  • 証券会社でM&Aを手掛ける投資銀行部門、及びベンチャーキャピタルも、日本基準で義務付けられているのれん償却がグローバル企業と比較して日本企業のM&Aが増加しない一因になっている、と主張している。

いずれも、のれんの償却に反対する立場として、よく聞かれる意見であると思います。

のれん償却に賛成の意見

一方、逆の立場の実務家で、のれんは償却すべきという意見をご紹介します。こちらも偶然見掛けた会計事務所のブログになります。

takanawa-audit.com

会計監査の実務家として、のれんの償却に賛成するコメントです。理由として、実務上、減損テストする前から(減損しないという)結論がほぼ決まっているから、という点が挙げられています。将来の見積り数値は容易に操作可能であり、いくら毎年減損テストをして、監査を受けているといっても、所詮は出来レースに過ぎないというわけです。

そこで監査現場で何が起きるかというと、達成できそうにない将来利益計画でも、「なんとか行けそうだ」というレベルまで理由付けをするという作業が始まります

なんと不毛な作業なのでしょうか。これはのれんの減損に限らず、固定資産の減損や棚卸資産の評価、未上場株式の減損、繰延税金資産の回収可能性など、主要な見積り項目全てに共通する話ではありますが、私自身かつて監査法人に所属した者として、容易に想像ができる光景でもあります。

なお、上記のブログでは直接的には触れられていませんが、減損テストの実効性への批判に関連して、IFRS適用会社の中にはBSの資産の大部分をのれんが占めているような会社もあり、そのようなBSの健全性について疑問視する声もあるようです。

のれん償却の理論的な根拠

さて、ここからは、もう少し理論的な考え方を見ていきたいと思います。

IFRSの考え方―IFRS3とIAS36

IFRSも、実は過去においては、のれんの償却を行っていました。しかし、2004年のIFRS第3号「企業結合」適用以降、のれんは償却せず、減損テストのみを行うことになっています。

IAS第36号「資産の減損」*2に関する結論の根拠において、のれんの減損処理を行わない理由として、以下の3つが記載されています(IAS36.BC131A~G)*3

  • のれんの効果の及ぶ期間およびその減価のパターンは、一般に予測不可能であり、恣意的な期間でのれんの規則的償却を行っても有用な情報を提供することはできない

  • 有形固定資産も、キャッシュ・フローを生み出すと想定される期間にわたって償却されているが、のれんと異なり、期待される物理的効用の上限が存在する*4

  • 厳格で実用的な減損テストを実施できれば、より頻度多く減損テストを行うことによって、財務諸表利用者により有用な情報を提供できる。

IFRSでは、「表現の忠実性という形での妥当な水準の信頼性を、実務上可能なものとのある程度のバランスをとりながら達成することが、…のれんの当初認識後の会計処理について審議する際に直面する最も大きな課題である」とした上で、以下のように結論付けています(IAS36.BC131E)。

当審議会は、企業がのれんの全体的な価値を(例えば、広告や顧客サービスに資源を使用することにより)維持できることを前提とすると、のれんが資産であるならば、ある意味で、企業結合で取得したのれんが消費されて自己創設のれんに置き換えられるのは事実に違いないと認めた

 

しかし…取得したのれんの消費を反映する償却費の有用性は、それに置き換わる自己創設のれんが認識されない場合、依然として疑問だと考えた。したがって…恣意的な期間でのれんの定額償却を行っても有用な情報は提供できないという…結論を再確認した。…実例と研究による証拠の双方がこの見解を裏付けていることに留意した。

面白いことに、現行IFRSでも、取得したのれんが自己創設のれんに置き換わることは認めているのです(自己創設のれんについては後述します)。それでも、恣意的な取り扱いは表現の忠実性に反するので、のれんを恣意的な期間で償却しても有用性のある情報は得られない、としています。

表現の忠実性(忠実な表現)は、有用な財務報告(意思決定有用性)における質的特性の一つですが、詳しくは以下のエントリーなどをご覧ください。

keiri.hatenablog.jp

日本基準の考え方―企業結合に関する会計基準

日本基準では、企業結合に関する会計基準において、「のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。(32項)」と定められています。

結論の背景として、105項、106項にその根拠が示されています。「規則的な償却を行う」方法と、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法の二つが考えられるとして、なぜ前者を採用するのか、3つの理由を挙げています(105項)。

  • 企業結合の成果たる収益と、その対価の一部を構成する投資消去差額の償却という費用の対応が可能になる

  • のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、のれんを規則的に償却する方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫している

  • 企業結合により生じたのれんは時間の経過とともに自己創設のれんに入れ替わる可能性があるため、企業結合により計上したのれんの非償却による自己創設のれんの実質的な資産計上を防ぐことができる

また、「のれんの効果の及ぶ期間及びその減価のパターンは合理的に予測可能なものではない」という見解(すなわちIFRSによる主張)についても、以下のように反論します(105項)。

  • 価値が減価した部分の金額を継続的に把握することは困難であり、かつ煩雑であると考えられるため、ある事業年度において減価が全く認識されない可能性がある方法よりも、一定の期間にわたり規則的な償却を行う方が合理的であると考えられる

  • のれんのうち価値の減価しない部分の存在も考えられるが、その部分だけを合理的に分離することは困難であり、分離不能な部分を含め「規則的な償却を行う」方法には一定の合理性があると考えられる

さらに、「規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行う」方法について、問題点を2つ挙げています(106項)。

  • のれんが超過収益力を表わすとみると、競争の進展によって通常はその価値が減価するにもかかわらず、競争の進展に伴うのれんの価値の減価の過程を無視する

  • 超過収益力が維持されている場合においても、それは企業結合後の追加的な投資や企業の追加的努力によって補完されているにもかかわらず、のれんを償却しないことは、上述のとおり追加投資による自己創設のれんを計上することと実質的に等しくなる

少し長くなりましたが、以上をまとめると、費用収益対応の原則、投資回収計算、そして自己創設のれんの計上の禁止の観点から、のれんは償却すべきであるということです。そして、のれんの効果の及ぶ期間や減価のパターンが予測できないという反論に対しても、規則的な償却には一定の合理性があるため、のれん償却を否定するほどの理由にはならない、としています。

IFRSと日本基準も、取得したのれんが時間の経過とともに自己創設のれんに入れ替わることは認めているのですが、結局のところ、「のれんの効果の及ぶ期間と減価パターンが予測不可能であり、償却計算が恣意的にならざるを得ない」という点をどれだけ重視するか、が両者の見解の相違のポイントになっていると考えられます。

すなわち、のれんの償却について、恣意的な計算であるため有用性がない、とするのがIFRSの立場であり、投資回収計算の観点からは恣意的な計算であっても十分に合理性がある、とするのが日本基準の立場だと言えます。

自己創設のれんの資産計上の禁止

以上の議論において、自己創設のれんの話が出てきたので、簡単に補足説明します。そもそも自己創設のれんとは、一言でいえば「自社の超過収益力」ですが、なぜこれのBSへの計上が禁止されるのでしょうか。

IFRSにおいては、「自己創設のれんを資産として認識してはならない。(IAS38.48)」と明確に禁止されています。理由としては、「信頼性をもって原価で測定できるような、企業が支配する識別可能な資源ではない(すなわち、分離可能ではなく、契約その他の法的権利から生じたものでもない)から(IAS38.49)」とされています。

日本基準においては、自己創設のれんを資産計上しないことにつき、明確な定めはないようですが、ASBJ概念フレームワークにおいて、「自己創設のれんの計上は、経営者による企業価値の自己評価・自己申告を意味するため、財務報告の目的*5に反するから(第3章「財務諸表の構成要素」脚注14)」と理由が述べられています。

その他の理由としては、自己創設のれんを資産計上すると、反対勘定に利益を計上することとなり、将来の利益の先取りにもなる点などが挙げられます。

いずれにせよ、自己創設のれんの資産計上は、どの会計基準においても禁止されていると考えられます*6

海外での議論の実際

のれん償却を巡る海外の議論について、以前経営財務に掲載されていた、ASBJ元委員長の⻄川郁⽣氏による連載「シリーズ『学⽣と語る会計基準』 西川教授のポイントレッスン︕」の「第8回 のれん」(2016年4月4日付)の回に興味深い記述がありましたので、ご紹介します。

学生:日本の主張は、非償却だと取得したのれんの価値が下がる分を自己創設のれんが置き換わることになって、自己創設のれんは認識しないという会計の原則的な考え方に抵触するというものですね。

 

教授:それに対しては、価値が下がるとは限らないとかいろいろな反論があるけれど、素直に自己創設のれんの発生を認めて、限られた状況(取得したのれんがある場合だけ)だから許されるというのが一般的ですね。大上段の議論をさせないような。

現実問題として、2004年にIFRSがのれん非償却を決めてから、20年近い年月が経過しており、のれんを償却しない実務が根付いています。これを今からひっくり返すとなると、相当大変だということでしょう。のれんを償却すべきであることについて、色々と理屈を並べたとしても、「大上段の議論をさせない」ような状況にあるということです。

また、上の連載では、のれんの非償却化は、元々政治問題であったことも示唆されています。

教授:2001年に公表された⽶国基準の公表への道のりで、FASBは⼤変な苦労を重ねています。プロジェクトの当初の⽬的は、⽶国SECが⻑年求めていた企業結合における持分プーリング法の廃⽌でした。当時の公開草案段階ではそれ以前から⾏われていたのれんの償却を維持するものでした。それが、政治的圧⼒などもあって,プーリング法の廃⽌とセットで、パーチェス法で⽣じるのれんについて⾮償却とする結果になりました

 

学生:受⼊識別可能資産負債のB/Sの評価額を公正価値として、のれんを計上させる代わりに、それを償却させないで、P/L上はプーリング法に類似した結果が出るようにしたのですね。

 

教授:そういうと⾝もふたもないので、償却に代わる役割を減損に与えたのだということにしておきます。

西川教授の新説(?)―「のれん=簡便法説」

上記の引用した連載において、西川氏が面白い見解を披露されていましたので、合わせてご紹介したいと思います。

教授:PPA*7を完璧に行って取得のれんを発生させない(識別不能資産撲滅の)会計処理をしたらどうなるでしょう。

 

学生:ちょっと待ってください。無形資産は限られますから、有形資産に配分してしまうのですか?

 

教授:さすがに現金など金融資産はまずいとしても、有形固定資産などを含めて使用価値で測定すれば理屈上のれんを消去できますね

 

学生:のれんを消去するまで割り振って,それを各資産の使用価値といってしまえば,できますね。

 

教授:その時の資産の償却はどうなります?

 

学生:割り振られた資産ごとの耐用年数で償却でしょう。

 

教授:土地は議論があるとしても,その他の資産部分は少なくとも非償却ということにはなりませんね。…のれんの計上というのはそもそも個々の資産を使用価値で測ることの代わりに行われる簡便法だともいえます。これを「のれん=簡便法説」と名付けるかな(笑)。

この「のれん=簡便法説」は、のれんは償却すべきという説明として、非常に有力であると思いましたがどうでしょうか*8。この連載については、書籍『会計基準の考え方』(税務経理協会)としても出版されていますので、興味のある方はご一読ください。

一般的に、経理マン(会計の実務家)はついつい目の前の(基準に書いてある)正しい会計処理ばかりに集中してしまうことが多いのですが、たまにはこのように会計基準の理論的な背景について考えてみるのも面白いと思います。

結論

以上の議論を踏まえると、私自身、日本の経理マンという立場もありますが、やはり日本基準の見解の方に分があるのではないかと考えています。すなわち、のれんを償却しない理屈はないと感じられます。

再度、上で紹介した連載から引用すると、「高く買った部分は償却(回収)しなくていいということにはならない」「のれん部分を投資回収計算から外していいという理屈はない」ということです。

冒頭で、のれん償却に反対する実務家の意見を紹介しました。超過収益力が減価していないにも関わらず償却するのはおかしい、また恣意的な耐用年数により償却するのはおかしい、という話ですが、そもそも取得したのれんが減価して自己創設のれんに置き換わることはIFRSも認めています*9適正な損益計算(≒投資の回収計算)の観点からも、のれんの非償却はまったく正当化できないように思います。

また、のれん非償却の最大の拠り所である減損テストについても、監査実務の観点からすれば、残念ながら不十分なものと言わざるを得ないのが実態のようです。

さらに、日本基準下ではのれんを償却しなければならないので、M&Aが活発化にならない、というのはさすがに言いがかりであるように思います(笑)。将来キャッシュ・フローに影響がなければ、株価には影響がないはずで(IFRSを採用してのれんを非償却にしたことにより、株価が有意に上昇した、という実証研究を見たことはありません)、業績測定のための「ものさし」(会計基準)を変えて見た目を取り繕っても*10市場を欺くことはできないと思います*11

現在、IFRSにおけるのれん償却について見直しの議論が進められており、先行きはまったく見通せない状況(とは言え、のれん非償却を覆すのは難しそうな雰囲気)ですが、一経理マンとしても興味をもって状況をウオッチしていきたいと思います。

*1:おそらく「公正価値」より「使用価値」とする方が正確であるように思いますが、原文のままとしてあります。

*2:ちなみに、IFRS第3号「企業結合」でも、IAS第38号「無形資産」でもなく、IAS第36号「資産の減損」に記載があります。当初、IFRS3、IAS38を探していて記載が見当たらず、少し混乱しました。

*3:ここでは、秋葉賢一著『会計基準の読み方Q&A100(第2版)』(中央経済社)p164-165より引用しています。なお当書では、実証研究の結果から、のれんは5年程度で減価するため、比較的短い年限による規則的償却を行うべき、と主張しています。

*4:少し分かりにくいですが、「のれんと異なり、有形固定資産の耐用年数は、企業にとっての期待される物理的効用の範囲を決して超えない(IAS36.BC131F)」ということです。

*5:この点、第1章「財務報告の目的」18項において、「特定の事業について情報優位にある経営者は企業価値の推定についても投資家より高い能力を持つという考え方から、その推定値の開示を経営者に期待する向きもある。しかし経営者自身による企業価値の開示は、証券の発行体が、その証券の価値に関する自己の判断を示して投資家に売買を勧誘することになりかねない。それは、証券取引法制の精神に反するだけでなく、経営者としてもその判断に責任を負うのは難しい。そのため、財務報告の目的は事実の開示に限定される。」と述べられています。

*6:次の節で紹介する連載の「第12回 ⾦融負債の測定と⾦融資産の減損」においては、「自己創設のれんが資産計上されないから,資産効率の企業間比較が簡単にできる」と、自己創設のれんが計上されないことのメリットも述べられています。

*7:Purchase Price Allocation:企業買収時に行われる、取得原価の配分に伴う無形資産評価のことを指します。のれんに含まれる被買収企業の無形資産を識別・評価してオンバランスすることにより、のれんを小さくする手続きとも言えます。

*8:なお、記事の続きでは、この理屈を推し進めると、「のれんの額をPPAで完全に個別の資産に置き換えるとすると、置き換えられるべきのれんの総額は全部のれんの額にあた」るため、「取得した部分ののれん(以下、部分のれん)より、全部のれん(⾮⽀配株主持分ののれんを含む)の⽅が正しいということも⾔える」として、部分のれんのみを認めている日本基準にとって「不都合な真実」が明らかになる、というところまで議論が進められています。

*9:上の脚注で紹介した書籍によると、実証研究においても、のれんが5年程度で減価することが示されています。「超過収益力が減価していないのに償却するのはおかしい」という実務家の意見は良く耳にしますが、これはIFRSの考え方が適切に理解されていないことに加えて、実証研究をも無視する二重の誤りを含んでいることになります。私自身、実務家としての自戒も込めて、「知的影響力から自由なつもりの実務屋は、たいがいどこかの破綻した経済学者の奴隷です。」というケインズ箴言を、改めてここで引用したいと思います。

*10:不況下においては「時価会計や減損会計を停止すべき」などという政治的圧力が掛かることがありますが、これと同じ話で、「百害あって一利なし」でしょう。

*11:もし欺けるのであれば、それは市場関係者の会計リテラシーこそが問われるべきでしょう。