監査人の経験は経理実務の役に立つか?
私は上場事業会社で経理マンとして働いていますが、前職では大手監査法人で監査の仕事をしていました。ここでは、監査人の経験が事業会社の経理業務に活かせるかどうか、私の経験をもとに簡単に書いてみたいと思います。
なお、ここでは狭い意味の経理業務に限定するため、財務や出納については記載を割愛します。
この記事は主に以下の方に向けて書かれています。
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経理業務とは
経理(Accounting)の仕事と一言で言っても、その会社の規模によって役割範囲は大きく異なります。Accountingとしての、より広い概念として「会計」を考えると、会計に関する業務として、大きく下記の3つの領域があると考えています。
- 財務会計(Financial accounting)
- 決算、開示など
- 管理会計(Management accounting)
- 原価計算、予算管理など
- 税務会計(Tax accounting)
- 税務申告書作成など
小さな会社であれば、上記の全てを経理が行いますが、大きな会社であれば、財務会計は経理課、管理会計は経営企画課、税務会計は税務課、などと部署が分かれているケースもあると思います。
監査人の経験が活かせるのは?
では、これらの中で、監査人の経験が活かせるのはどの分野でしょうか?
結論から言えば、財務会計は監査人の経験をそのまま利用できます。今まで監査人としてチェックしていたものを、経理として社内で作成・チェックするというだけで、チェック項目が変わるわけではありません*1。税務会計も申告書の作成など最初は慣れないところがあるものの、一応の知識があるので、顧問税理士などの助けも借りつつ、何とかなります。しかし、管理会計に関しては、残念ながら監査人の経験はあまり役に立ちません。というのも、監査では管理会計の検証はほとんど行わないからです。たとえば予算管理について、実施有無など通り一遍のチェックはするかもしれませんが、その中身(予算編成のやり方)まで突っ込んで監査することは(GC注記でもついてない限り)ほとんどないでしょう。
しかし、管理会計こそが経営に直結する会計であり、経理として頭を使って付加価値を付ける箇所だと思います。事業会社の経理マンとしては、この管理会計領域を強化していく必要があると強く感じています。
監査人と経理マンの共通点
経理を含む管理系の仕事は、一言で言えば「会社を取り巻くリスクを早期に発見・識別し、対応する」ことであると言えると思います(法務部であれば法務リスク、人事部であれば労務リスク、等々)。そのため、会社を取り巻く内部環境、外部環境の変化(新たな取引の発生など)を日々モニタリングすることが求められます。リスクの評価は、リスク・アプローチを是とする監査人にとっても最重要の課題でしたが、これはまた事業会社の経理も同じであるように思います。社内の変化や新たな取引の発生を適時に把握し、会計上・税務上および内部統制面のリスクを早期に識別し、対応をとらなければ、会社の存続が危うくなるおそれがあるのです。
ようこそ令和。Blogはじめました。
今日から令和元年がスタートしました。元号改正は、全国民を強制的に気分一新させるすごい仕組みだと思います。これを機に新しいことを始めようと思う人も多いのではないでしょうか?
ということで、私もBlogを始めてみることにしました。日々の気づきや書籍から学んだこと、最近考えていることなどを、備忘録も兼ねてざっくりと書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。