『マネジャーのための人材育成スキル』

最近、経理部内の後輩の育成について考える機会があり、以前購入した 大久保幸夫著『マネジャーのための人材育成スキル』(日経文庫)という本を再読してみました。

この本を読んで、以下のような育成の重要性を改めて認識しました。

  • 報連相*1の習慣を身につけさせる

  • しっかり褒めて、しっかり叱る

  • 強みと弱みを伝える

  • 少しだけ高めの目標を設定する

  • 考える習慣を身につけさせる*2

ただ、これらの方法論ももちろん有用なのですが、一番心に残ったのは、人材育成のゴールは何か、という話でした。

この本の著者は、人材育成の到達目標は「プロフェッショナルにすること」であると述べています。プロフェッショナルになれば、あとは本人が自律的にキャリアをつくり、放っておいても成長を継続できるようになるから、とのことです。あまり人材育成のゴールについて考えたことがありませんでしたが、非常に納得感がありました。

この本では、プロフェッショナルを、以下の要件を満たす人であると定義しています。

  • 専門的な知識(わかる)と技術(できる)を兼ね備えた人

    • 専門知識:社会一般で通用する公式の知識を体系的に理解し、説明できる

    • 技術:実践的な技術であり再現性がある

  • 高度な職業意識(プロフェッショナリズム)を持った人

    • 自律と自己責任:やり方は自分で決める、その代わり責任を持つ

    • 利他性:個人の満足と他者の利益のために最高品質を追求する

    • 職業倫理:やるべきこととやってはいけないことを明確に知り、厳格に守る

    • 継続学習:常に最先端の専門知識を吸収し続ける向上心に終わりがない

私が所属する経理部において、専門知識や技術の指導は日常的に行われていますが、職業意識(プロフェッショナリズム)についてはなかなか指導が難しいと感じました。

もちろん、難しくて分からない論点をごまかす、いい加減な数値の集計を行う、といったことは職業倫理の観点から(そもそも社会人としても)論外ですが、最低レベルをクリアしているスタッフを、さらにレベルを引き上げて高いプロフェッショナリズムを身につけてもらうとなると、折に触れてこういった話をして、自ら考えてもらうよう仕向けるしかないのかもしれません。

*1:日本の職場において、安心して上司が部下に仕事を任せるための行動習慣であり、管理する一方で、自由にやらせるための方法でもあります。逆に欧米では受け入れられていない考え方のようであり、グローバルな行動習慣ではない点に留意が必要です。

*2:具体的には「あなたはどう思うのか」と尋ね、尋ねた以上は、最後まで耳を傾けて聞き切る覚悟を決めます。これにより、部下の論理的思考力が養われます。