男性の育児・育休について

2019年の終わり頃、第一子となる娘が誕生しました。生後2か月を過ぎて思ったことや、男性の育児や育休についていま感じていることを、つらつらと記録しておきたいと思います。これから子どもが産まれる方(特に男性)の参考になれば幸いです。

子どもが産まれた直後のこと

私の妻は出産後1週間ほどで退院し、実家に1ヶ月半ほど滞在していました*1。一応、里帰り出産となりますが、自宅と妻の実家とは1時間程度で行ける距離ですので、私はしばらくの間、毎週末に妻の実家を訪ねて子どもの面倒を見る生活を送っていました。

夫の育児参加は、とにかく最初が肝心です。沐浴(ベビーバスを使ってお風呂に入れること)、オムツ替え、粉ミルクの調合*2は、退院後すぐに行う必要があります。最初は夫婦ともに素人ですので、右往左往しながら対応するのですが*3、ここで夫も一緒に協力しないと、育児スキルに大きな差がついてしまい、後から追いつくことが困難になります。そうすると、育児参加の壁がどんどん高くなっていきます。よって、繰り返しになりますが、最初がとにかく肝心です。

子どもが産まれる前に、自治体が開催している両親学級に参加したのも効果的でした。ここでは、保育士の方が、沐浴やオムツ替えの仕方を教えてくれます。もちろん人形を使った実習なので、あまり役に立たないのではないかとも思っていましたが、今から振り返ると、保育士の方から「正しいやり方」を教わる貴重な機会だったと思います。「正しいやり方」を教わらないと、ずっと自己流になってしまい、やり方が正しいのかどうか自信が持てません*4

とにかく産まれたばかりの赤ちゃんはわからないことが多くて困惑します。たとえば、やたらしゃっくりが多かったり、睡眠時間が長すぎたりして心配になることもありました。ミルクを飲む量もどのくらいが適正かよくわからず、泣くたびに与えていたので体重が増えすぎてしまったこともありました。私はしばらくの間は週末だけの育児でしたが、週末は一晩中、なかなか寝付かない赤ちゃんの面倒を見ていました。赤ちゃんは産まれた直後は昼夜の区別がないので、夜中でもなかなか寝てくれません。平日は妻が面倒を見ていましたので、週末だけは私が夜中も面倒を見るようにしていましたが、それでも大変でした。

ただし、産後2~3か月も経てば大分慣れてきて、大変だった育児も日常の一部となってきました。大変なのは最初だけだと思って、あまり深刻に考えずに取り組むのが良いと思います。

育休について

産まれた直後の1ヶ月は、妻の身体は本当に大変そうでした。いわゆる「産褥(さんじょく)期」と呼ばれる期間で、昔から「産後1ヶ月で床上げ」というように、基本的には寝たきりで過ごすのが身体の回復のためには良いとされています。

我が家の場合は、妻は里帰り出産で実家に帰っていたことと、私自身の仕事が忙しい時期と重なったこともあり、出産直後に育児休業(育休、なお育児休暇ではない)は取得しませんでした。今後、仕事が落ち着いてから、1か月程度取得したいと考えています。里帰り出産でないのであれば、出産直後に男性が育休を取ることは強く推奨されるべきだと思います。

いまだに日本社会では、「男は働いて金を稼げばそれで良い」という価値観が(男女ともに)根強く残っているように思います。男性が育休を取ることについて、男性上司のみならず、年配の女性がしかめ面をすることもあるようです。妻が育休を取っているのだから、夫が育休を取る必要はない、男は働いでお金を稼ぐべきだ、というわけです。しかし、そもそも母親一人の育児(ワンオペ育児)が大変だ、ということが問題なのです。夫婦二人の子どもであり、夫婦二人で子育てするべきなのは当然であるように思います。

一方、この手の話は、妻の側がどの程度キャリアを考えているのかによっても変わってくるように思います。専業主婦になりたいのか、それともできれば仕事を続けてキャリア形成したいのか、それによって、夫婦間の育児分担の方向性は全く異なってくるでしょう。つまり、一般的に産褥期における男性の育休は必要であるとしても、「男性は必ず半年~1年超程度の長期間の育休を取得するべき」などと画一的なルールを決めることはできず、夫婦間で話し合って育児方針を決めたら、それが認められる、実現できるような社会が理想であるように思います。

男性も育児をするのが当然

最近は育休を取る男性が少しずつ増えてきており、私の周りでも実際に育休を取得した男性の話を聞くようになりましたが、育休を取っても育児をしなければ意味がありません。中には、育休を取ってただ遊んでいるだけの男性もいると聞きます。「育児をしない男を、父とは呼ばない」と書かれたポスターを厚生省(当時)が1999年に作成して話題となったそうですが、今でも育児をしない男性は一定数いるようです。

もっとも、私の周りを見る限り、最近の若い男性は当然に育児を行う傾向があるように思っています*5。女性の立場としては、結婚相手が育児をするかどうかを結婚前に良く見極めておくことが重要であると思います*6

希望すれば育休を取れることが当たり前の社会へ

最近ではメガバンクなど大企業でも男性の育休の取得を推奨することが増えてきています。育休が取れることがステータス、という価値観になりつつあり、好ましい流れだと思います*7。逆に、有休を取らせない会社がブラック企業であるのと同様、育休が取れない会社もブラック企業と呼ばれるようになるかもしれません。実際、「育休を取られると業務が回らなくて困る」というのは業務が属人化している証拠であり、もしその人が辞めたらどうするのか、会社としてその体制で大丈夫なのか、と思ってしまいます。育休の取得は半年以上前から分かるはずなので、いくらでも準備はできると思います。

とはいえ現実的に半年や一年休むと元の職場(部署)への復帰が難しいこともあると思います。1か月程度であればやりくりできても、長期の不在になると新しい人がアサインされてしまい、戻る場所がなくなってしまう可能性もあり、そうすると会社内でのキャリアが断絶してしまうリスクもあるのです。これは現状、長期の育休を余儀なくされる女性についてもまったく同様であり、キャリア形成を重視する女性にとっては深刻な問題です。

この点、私が昔所属していた監査法人では、産休・育休が明けて職場に復帰した際に、元々の監査チームには戻れないことがあったとしても、他の人手が足りない監査チームに移って活躍することができる環境にありました。監査法人のようなプロフェッショナルファームであれば、キャリア上の障害についてはあまり心配しなくても良いのかもしれません。一般企業ではこのようなことは難しいかもしれませんが、いずれにしてもキャリア形成においては専門性の有無が重要で、このあたりは転職についてと同じような話なのかもしれません。

*1:私は12月決算の会社の経理マンをしているため、期末決算対応の1月が1年でもっとも忙しく、平日に育児をする余力が全くなさそうだったので、仕事が落ち着くまで少し長めに実家に帰ってもらいました。

*2:我が家では粉ミルクと母乳の混合を行っています。粉ミルクを使えば父親もミルクを与えられるため、母親が長時間外出することも可能になります。完全母乳を勧められて粉ミルクなしで育てる場合や、そもそも粉ミルクを飲まない赤ちゃんもいるようですが、母乳だけで育てるのは本当に大変だと思います。。。

*3:最初はお風呂に入れた後、服を着せるのにも一苦労でした。

*4:夫の立場としては、妻から教わるより、保育士さんから教わった方が素直に受け入れられるということもあるかもしれません。

*5:子どものオムツ替えをしたことがない等と言っている若い男性に会ったことはありませんし、少なくとも育児をしないことを堂々と口にする若い男性は皆無であるように思います。

*6:特にインターネット上で、妻の旦那に対する愚痴の書き込みを見る度に、強くそう思います。おせっかいながら、若い未婚女性にはこの話を良くするようにしています。笑

*7:上でも書いた通り、全員の取得が必須なのではなく、育休を取りたい人が取れることが大事だと思います。